千知庵 虎落笛 -mogaribue---


北国の四季のうつろいに旅する人の心はいずこか
果てしなく連なる時の流れに身をゆだね
たそかれは血色したゆふぐれ  「漂えど沈まず」




2004.10.03

旅人への道


「旅」その言葉は人を引きつけてやまない
人がこの地に生まれ、移動と定着を繰り返した生と死の長いその記憶が
遺伝子となってわたしの血にも流れている
そして古傷の疼きのように漂泊の想いがこころを駆けめぐり
「さあ、出かけようぜ!」と、新たな旅立ちを促すのだ
人生の最終ステージへの舞台に立って、せめて、わが行く末を見つめつつ自由の風の匂いをかごう
そしてある日、終末が身近に見えたとき
南の島の風に吹かれて、冷たい麦酒の泡を舐めているだろう
たそかれの赤い太陽と共に最後の一滴を飲み干したとき
きっと星になる
風よ吹け、雨よ降れ、南の島の夜に

人が生きていくためには、生きる目的が必要だ
漫然と生きることもできるけれど、生物的に生きているだけだ
それを悪いとは言わないが、わたしにはできない
わたしの前に今は見えない道をさがす、道をつくる
たとえそれが死への階であってもいいだろう


2004.03.14

天空や 辛夷のごとき 夢を見ん



2004.01.24

雪の街


のつのつと雪が降る

のつのつと雪が降る

降りやまぬ雪はどこからくるのか

のつのつと雪が降る


誰も知らぬ遠い国から降るのだと

今はもう思い出せぬ記憶の底に語られた言の葉に

ひとひらの雪のかけらが

よりそいながらにふうわりとあずましくあつまりやはらかく

のつのつと

のつのつと


雪が降る

そは、雪女の微笑み



ぶわあひーびゅ ぶわあひーびゅ

雪が風を呼び 風が雪の狂気を呼び覚ます

ぶわあひーびゅ ぶわあひーびゅ


雪女が髪を振り乱し泣き叫びもだえる夜

乱れた髪の一筋一筋が白く連なる風雪のもがり笛


冬の冬の冬の真っ只中の道標

どこまでもどこまでもつづくつづく白い風雪


ぶわあひーびゅ 風雪のおもひはきらら雪氷となって窓に張り付き

そは、描かれし雪女の恋文



030921

風寂し 落ち葉時雨れて 彼岸かな


030903

炎立つ 天より蝉の墜ちにけり


030823

誰が怨ぞ 星赫くして 夏終わる    妖星(火星)大接近


030608

風さやか アカシヤの香や 房ごとに

朱や黄や 山笑みに満ち 躑躅かな

草原に 肉焼くけむり香 春もみじ

光満つ 山春もみじ バーベキュー


030427

さやかにわかき しんたまねぎを
わりわりとくらふ

さやけくかるくからやかに
わりわりと
わりわりと

みなぎりしろく みずくわかさや


030409

老残を 見せじ桜や 雨嵐

葉桜や いのち還りぬ 春の風


030211

日溜まりに 爺 布団干し 死を待てり


021016

夏戻り 押入の香や 赤き糸


020815

血の「かたち」

盆の風にふとおもふた

クリニックの採血管に真紅の血がながれて
生きている重みをおもふた

血の「かたち」
そは、ひとかた<人形>のはじまりか

終わり無き、らせんのきざはし
老いた母の姿は、黄泉の父を超えてしもうた

仏壇の中に、わたしの相似形がいる
盆の風、血の「かたち」


020728

月の夜に
山百合の白い花の香りがただよい
山の湯宿の夜は更けていく

濡れし森 月の予感か 蝉時雨

朝霧の 霞むさきから 夏陽さし

こころしぐれて めしをくい みちみちて かえりなん いざ、かまくらの いくさばや

ふかみどり 夜を流すや 明けの湯香



020609  松山にて

夏雲に重き緑や 道後の湯

子規なみだ 山頭火笑ふや 道後酒

霊熱き 湯の香 団子を残したり

    ・「霊の湯」「神の湯」道後温泉元湯は従業員まで古びてやさしい

松山城 櫓の高みに民おもふ

筋金の錆びたる陰に老婆あり

    ・「筋金門」と名付けられた城門は鉄の条片が門柱に張り付けられている

ラムネ玉 城趾の風はじけたり



020429

淡みどり 20パーセントの小糠雨


020407

ちびりたる 燭の灯しや 花あらし


010113

雪原に 光りぶちまけ 冬の月

萬灯の 月有明や 冬光る


010106

なで肩に 吹雪き吠えるか 冬の星

暗雲の 北天にあり 月上弦

綺羅星の 白き野面に 突き刺さり


001210

ゆきくれて かぜまほろばの はるははるけく

あわゆきの わきたるなべや ゆきあらし


001125

柿食えば 風 関東の空っ風

柿甘く 想う夕日や ふるさと友垣


011111

冬来たり 干し大根に雪白粉


001104

磯菊の息をひそめて秋に這い

凛として小菊のままに嫁ぎいき


001029

時雨れてあかく日が暮れて
闇に誘う時しずく

裂けし石榴の紅の牙
闇の濃き間に屠る秋


001008

薄紅葉 斜光に恥の見え隠れ 落ち葉時雨にまだ落ちもせず

五十路山 越えつつ 紅くさびれたり

秋盛り 濡れて悲しき きのこ色

昼の野や 秋ぬくもりて 鮭にぎり


000923

胡桃落ち ならびて腐る青衣


000917

夏光り 透けし葉裏や秋の風


000910

海よ波よ 黄金のひろがりゆきて 風肥ゆる


000903

水引の紅転々と雨に揺れ


000618

週末は風に吹かれて

陽の射す森を風が渡る
湯船に身をゆだね、昼からたそかれの時を流れる

シャワーの熱いしぶきを記憶したままデッキの風に揺れる
ゆらゆらと缶ビールの泡をなめながら喉の快楽に浸る

カッコウの独唱、雀たちの語らいにたそかれが深まり
暮れなずむ時の風は東

この地の梅雨はいまだ来ず
冷涼な風のリズムが酔いを中和してよぎる

時はいま初夏へのきざはし
ただ、うつろいの週末は風に吹かれて


000528

雪折れし 山桜花 凛とあり


000430

鳶天空 風切羽根に殺気あり


000423

万緑の元芽のさきに春しぐれ

つんの芽に陽はまさに春ならんとす


000416

芽吹くいのちのちから
風冷たく吹き荒ぶ時の流れ
輪廻とはかたくなな石碑の記憶か

想いを伝えることの意味を流れに訊くとき
きざまれた意識の痕跡が宙に漂うのだ
エブレ・きっとね・・・約束はしない


000409

びーびびっと 風吹くいのちか 春津軽 tonikaku kazega fukisusabu


000401

幾千の雪女の髪や夜風雪 ikusen no yukime no kami ya yafusetsu


000312

雪原に佇む黒い天使がいた
片翼が傷ついているって、痛くないのか?

小さな小鼻をふくらませて
華麗に息巻く
情熱の行き場所が無いんだ

漂えど沈まず

白い雪嵐に怯えながら
わたしのすねに噛みつく
中天に細く白く眉月のかがやき

きっとね
流れた数滴の血潮の痕に菫が咲くんだ
振り返ると風雪の闇


000305

冬閉めか 黒き雪くれ 陽にざざれ fuyujimeka kurokiyukikure hinizazare

山靄い にじむ銀雪 春待たる yamamoyai nijimuginsetsu harumataru

風雪の 桜花となりぬ 風邪の夢 fuusetsuno oukatonarinu kazenoyume


000226

雪しずく
日だまりは春
肌を刺す風は厳冬

渦巻く風雪はヘッドライトの芸術
時の止まった深い夜に
まんどろの月が輝く

やはらかき雪の平原
はるけき幻想の時を超えて
地吹雪の恋


000219

耳元に ささやくように 雪ふりつのる

きたの街 白夜の夢か ひとひらの雪


990814

線香の煙無き地や 異郷盆



2000.06.21

少年は宇宙

ブン バン バチ ブッパ 薪の燃える炎は文字を追い払いこころに揺らぐ
あかく赤く紅く茜くアカクあかく激しくひそやかに
薪ストーブの火は炎は揺らめきさかり交わる女と男

歳を経た男の粗なる魂に沁み入る音色はチャイコフスキー
チェロコンチェルトは田園の憂鬱か
昨夜までのJAZZは寒さに消え雪の精となり風に飛んでいった

高田老松町 聖母マリア幼稚園
炎の向こうに少年が佇む
シスターの腋臭の臭いにむせて登園を拒否したなんて
(誰にもいえなかった)

お弁当の時間に跪いて手を合わせるのが嫌だ!
誰にもわかりやすい理屈を4歳の少年が考えて発言した事実
赤く揺らめく炎の向こうに笑っている少年のそのまた奥に
グラスをかざした自分が笑っている

人は完成して生まれ日々衰えつつ死を迎える
経験則がすべてだなんて言いたくなるのは何なんだろう
グラスの縁を氷が回り金属音にチェロ

情熱が全てのビジネスの世界はもはや私を呼びはすまい
冷めた私に燃えろと選択された人生が語り続ける
が、耳はすでに遠い
が、薪をくべろじゃ少年よ

明日など暗闇に放つ銃弾
血色したゆふぐれにたそかれていくのはたれか
薪の炎がおき火となって揺らめきつつ消えていく

人は意識して人となり
猫は無意識のまま猫となる
意識の罪は重く意識のレベルに応じて心と魂を揺さぶり続ける

無我を求める修行僧の無我とは猫の無我と気づきはせぬか
残り火のか細ききらめきにゆららちらら夢がまぐわう
そう、星屑の陰りに秘めた想いは無い

遠い記憶の片隅に少年の片目が光る
ボクはいま宇宙だ
イノチトイウトキノナガレヲウタウソシテキエルノガユメダ

肉体は重くそしてシスターのごとく臭い
火は消える
グラスのウイスキーも無くなった
夜は深く三日月を消して青い

人生の冷える音が聞こえています
それでもボクはいま宇宙だ


010609

雨が旬 娘「新潮」小脇にし

北国の風や電話に 愛犬(いぬ)の声


000621

雪がちらつく夜

こころ疲れた天使が舞い降りるような風もない静けさがやはらかい
ひとは独り一人

酒の酔いにまかせて語りつつなぐさめる
「わたし・・・合う人がいないんです」

独り言の世界は万華鏡
森羅万象の玉手箱

かわいい天使は突如として獲物を狙う豹と化しくねる眼が宙を彷徨う
乳房をあらわに雪にさらして風雪の夜にこころたそかれしぐれる

「みんな・・・痛いんだ・・・生きるって・・・誰にでもできるだけに
考えてしまう人間の弱さなんだよ」

不幸が感じられる幸せに気付かないまま不幸を増幅させて
破滅に向かう自由を与えたのはいったい誰なんだろう

肉体は動物の遺伝子を連綿と受け継ぎ数万年の記憶を忠実に実行する
これは詩ではない事実の生命だ

生活の基盤をここに据え付けて囲炉裏の火を絶やすことがなければ死ぬまで生きられる
「それでいいんでしょ」「いい」

そんなものに理屈をつけるから、そんなものに価値を見つけようとするから
「こころが反乱するのでしょ」「そう」

生きる意味はあるけれども、生きることに意味はない
100年後私を覚えている人はいない

そう、あったとしても相対的な事実の幻想だ
「だったら、情に流れていいのね」「そうかもしれない」

猫の自由が欲しいか、犬の服従が欲しいか、どちらも生き方
いや、主人を引きずる犬の傲慢だって犬の自由

JAZZには不自由から生まれた自由
なのにソロのジャズメンは少ない

「でも竹山だったら」「生きる知恵だろうか」
盲いても生きられるのが人間だろう、犬は多分死ぬ

「知恵が邪魔して小さくしか生きられない人って沢山いるでしょう」「そう」
「だったら」「ん」

「それはSEX」「いや感応」
「でもSEX」「無限の感応」

「今だけ」「明日まで」
「SONO−MARIを知っているか」「嫌い」

頭の芯に響く鼓動はなんだろう
こころの痛みが突然消えたのはなんだろう

ビネガーでマリネした白花豆にからむオニオンスライス
火を見つめるブルーノート

いま(現在)を生きている
それは胃袋のむかつきに似てうねるトランペット

ひたすらに酔いを求めた青臭い時代に想像すらできなかったこの有り様は
考えることが無駄だったことの証か

「夢のほうがあたってた」「えっ」
いつかは燃え尽きる薪の火のように死ぬんだよ、消えるんだよ

いくら悲観的に考えても夢が実現してしまう
だから夢をみる意味があるんだよ

「信じられない」「信じる必要はない、後で気付くだけなのだ」
小さい夢しかみないと小さい人生しか現れない

「信じられない」「信じる必要はない、後で気付くだけなのだ」
大きな人生を考えるから失敗する

「えっ」「夢だよ、純粋な夢がね」
生きざまではない、生き方なんだって誰かがつぶやいて通り過ぎたんだ

「もしかして、オポチュニティ?」「そうかもしれない」
走ってはいなかったけれど、振り返って笑っていた

独り言の世界は万華鏡
森羅万象の玉手箱

数百万光年の遥か彼方に種の光子がちらら夢見る
成って消えるなら悩みもまた光の波動

ここは雪酒場
ストーヴの炎に煙が色づけの人生、明日など暗闇に放つ銃弾

血色した夕暮れなき白き乳房の世界
「わたしを抱いて」    「      」



少年の夢 1951.06