季節の風−弥生−
氷解け去り葦は角ぐむ。
さては時ぞと 思ふあやにく 今日もきのふも 雪の空。
大正二年の『新作唱歌』の一篇。
東京音楽学校教授吉丸一昌の歌詞も、同教授中田章による曲も、
ともどもに日本人の春を待つ「胸の思ひ」を歌いつくしていて美しい。
(「詩歌の森へ」芳賀 徹著 中公新書)
時代は変われど季節を吹く風は当時のままだ。
地球の温暖化によって季節を彩る風土の変化はあれど北国での春の実感はうれしくもある。
しかし弥生三月、立春を過ぎてなお寒気もあり雪もあるこの地に、
冷たき風が荒ぶ日は思わずこの歌が思い出されてならない。
陽射しもうららかなこの日、シベリヤから渡り来た白鳥が、
四五羽の小隊を五つ六つ「くの字」に編隊し北に向かって飛び去るのを見た。
そして、枯れ草の根元からヒバリが天にむかって見送る歌も聞こえてくるのだ。
そしてまた、季節はうつろいつつ人もまたうつろう。
花咲く弥生からその先に夢追い人の旅の始まりの時なのだろう。
寒風に舞う乙女子のはなしろき 百合虎 (「八戸えんぶり」にて)

帝産ファーム株式会社 ニュースレター「瓦ばんっ!」 第11号 平成19年3月10日 掲載